東京高等裁判所 昭和48年(ネ)2493号 判決 1975年2月27日
控訴人(原告)
岡博志
ほか二名
被控訴人(被告)
大成火災海上保険株式会社
主文
本件控訴は、いずれもこれを棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人ら代理人は、「原判決中被控訴人大成火災海上保険株式会社関係部分を取消す。被控訴人大成火災海上保険株式会社は控訴人岡博志に対し金一、〇〇〇万円、同岡定恵および同岡こうに対し各金三五〇万円並びに右各金員に対する昭和四八年九月一二日以降右完済に至るまでの年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との旨の判決および仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張および証拠の提出、援用、認否は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示と同一である。
控訴代理人は、訴外原田泰久は、訴外安東商店の依頼により、約五トンのチーズ(紡績糸の原料)を新潟まで運搬し、その帰途回り道をして東名高速道路上において本件事故を生ぜしめたものであつて、右事故は右訴外人が運送業務従事中に生じたものということはできないから、被控訴人主張にかかる普通保険約款の定めの適用はない、と述べ立証として〔証拠略〕を提出した。
被控訴代理人は、控訴人らの上記主張は争う、と述べ、〔証拠略〕を認めた。
理由
当裁判所は、当審における新たな証拠調の結果を斟酌しても、控訴人らの被控訴会社に対する請求は失当であると判断するものであるが、その理由は原判決がその理由において説明するところと同一であるから右説明を引用する。
〔証拠略〕によつても、訴外原田泰久が積荷の運送の目的地である新潟からの帰路に東名高速道路を選んだことが遊びがてらの見物のために回り道をしたものであるとの事実を認めるには足りないのみならず、右訴外人は、第三者の依頼により有償で貨物を新潟まで運送し、その帰路において本件事故を生ぜしめたのであつて、往路と帰路における係争貨物自動車の運行は一体となつて貨物の有償運送行為を構成するものというべきであるから、偶々帰路に東名高速道路を選んだことが控訴人らの主張するように、不必要な回り道をしたものであると仮定しても、このことは、本件事故によつて生じた損害が、被控訴会社主張の普通保険約款第二章第三条第二項にいう「自動車が保険証券に記載された以外の用途に使用されている間に生じた損害」に該当するとする結論に影響を及ぼすものではない。
よつて原判決は相当であるから、民事訴訟法第三八四条第一項の規定によつて本件控訴はいずれもこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第八九条および第九三条第一項前段の規定を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 平賀健太 安達昌彦 後藤文彦)